日本トレーニング指導者協会参与 魚住廣信氏

▼ JATIへの要望

1980年代はフィットネスの時代、1990年代は筋力トレーニングの時代といわれます。 1991年にはNSCAJapanができ、80年代に主流となっていたマシントレーニングからフリーウエイトが見直され、パワークリーンやパワースナッチなどのクイックリフトが重視される傾向が現れてきました。そして、ストレングスとコンディショニングということばが普及するとともに、パーソナルトレーナーという用語も生まれました。

これと同時に、資格の時代になったことからCSCSやCPTなどの専門家という資格が与えられました。しかし、知識だけで実践のできないペーパードライバーが増えたことは、事実です。資格や知識だけで、適切な指導ができるというものではありません。よく見られる教科書を丸写しした指導では、一時的な効果は見られてもその後の改善は期待できません。そのことが自覚できていない専門家を自負する人たちがどれほど多いことでしょう。

トレーニングの指導でお金がもらえ、生活していけるなんてことは、1970年代には考えられなかったことですが、今ではその道のプロとして生活している人たちが大勢います。しかし、その実態はよくわかりません。有名人についていれば、優秀な指導者と見られてしまう傾向はありますが・・・。

知識と経験が組み合わされて、初めて効果が期待できるものであり、それがプロとして活動できる絶対条件でもあります。闇雲に、「頑張れ」「もっとハードに」という指導では、精神的にも疲れてしまいます。「楽に」「スムーズに」やらせることが最大の効果を獲得できるということを理解しなければいけません。

また、考え方は時代の経過とともに変わるし、古い考え方が新しいものとなって再出現します。歴史は繰り返されるというように、トレーニングの考え方も同様です。昔のトレーニングが、あるとき新しいトレーニングとして出現するのです。その例がプライオメトリックスです。古代から行われていたトレーニング方法です。昔のトレーニングを軽視してはいけません。また、忘れ去ってはいけないのです。

JATIに期待したいことは、自分の哲学を持って指導できる指導者を育ててほしいということです。頭は柔軟にし、いろんな情報を十分咀嚼し、その本質を理解し、何かの目的のために活用できるトレーニングの指導者を育てることです。これさえすれば、というこの世にベストな方法などはないということを理解していただきたいと思います。

いろんな分野の方が集まり、互いの主張をすることなく、自分の引き出しを増やすために参考意見として聞き合える会が理想です。ある一つの考え方を押し付けるような会であっては、得るものはありません。

「これは、こうしなければならない」ということではなく、「これは、このようにも、あのようにも考えられる」というように、あるアイデアを生むことのできる考え方を持ち合える会になってもらえることを願っております。

2006年7月31日

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